2012/6/29
第5話 神戸まつりと金環日食
5月はいい季節だけど、ボクにとってはちょっと騒々しい月だ。神戸まつりっていうのが3日間あった。ボクのマンションのすぐ下の公園にテントがいっぱい張られて、朝から何やら打ちつける音やら音楽やらで昼寝をするボクにとっては安眠妨害だ。
「エディ、日曜日(20日)にはパレードがあるから行ってみようね」とママ。「去年もパパに抱っこされて見に行ったでしょう?覚えてない?」そういえば屋台でタコ焼きっていうのを少しもらって食べたのを思い出した。今度はいろいろ食べられるんだって思って尻尾を振った途端「エディ、今年は屋台のものは食べないのよ。塩分が多いからね」とママが言った。がっかりだ。気安く尻尾を振るもんじゃない。パパはパレードにあまり興味がないらしい。「何とか祭りってのはへんな服装をした人が踊ったり、タイコを叩いたりして通り過ぎるだけ…」ってのがその理由だって。ボクもややパパの意見に近い。
何やら騒々しい中をパパとママと歩いてフラワーロードまで行った。「去年より人が少ないね」とパパ。「ミッキーがパレードする頃にはいっぱいになるわよ」とママ。パパがボクを抱っこして人前に出た。な、なんと…道いっぱいにものすごい数のオバさんが整然と列をつくって並んでいる。「エディ、どこまで続いている?」パパがボクを高い高いしてくれた。驚いた。ボクの視界のずっとむこうまで続いている。おねえさんは…と探してみても一人もいない。みんなオバさんだ。神戸中のオバさんが集結している感じだ。パパの会社のオジサン図鑑どころじゃない。オバさん図鑑が1000冊以上出せそうだ。全員が同じユニフォームでいつもこのあたりで見るおねえさんより背が低い。でも背すじをピンと伸ばしてまっすぐ前を見ている。一生の晴れ舞台って感じ。「エディ、みんなの着ているのはユカタっていって、昔の人は夏になると着てたんだ」パパが教えてくれた。
しばらく我慢して見てると田舎くさい音楽が大きな音で流れてきて、オバさんたちが一斉に右手を上げたり、左手を上げたりして、その度にすり足で前に進んでいく。神戸まつりの歌なんだって。それにしてもへんな踊りだ。いつもお家のテレビでママといっしょにK-POPのおねえさんの歌と踊りを見ているボクには信じられない光景だ。ボクが目まいがしそうになっていると「エディ、ミッキーが来るまでドギーズ神戸で休ませてもらおう」とパパが言ってくれた。正直ホッとした。
ミッキーとミニーはさすがに人気者だ。観客の数がさっきとは全然違う。ミッキーが手をふると、一斉に写真を撮る。自分が見るより写真を撮るために参加している感じ。あんな風な人気者になれたら気持ちいいだろうなって眺めていると、ミッキーはあっという間に通りすぎて行った。後にもいろんなパレードが続いたらしいけど、疲れたので早々にお家に帰った。
次の日は金環日食だって。太陽が月に隠れるんだって。「このあたりでは282年ぶりに見られるんだそうだ…」とパパ。数日前に会社の科学実験チームの人に特別につくってもらったボードを持って朝早くから東の空を見ている。「結構雲が多いな。いろんな準備をしても、雲にさえぎられたら終わりだ」とパパ。今度はママの番だ。うっすら見える太陽にボードをかざして「あれ、このボードおかしくない?わたしの顔しかうつらないよ!」「そんなはずはない。会社の専門家が作ってくれたんだから。太陽がちゃんと出てないんじゃない?」とあきれ顔のパパ。「あーすごいよ、よく見える。太陽が少しずつ月にかくれていく!」さっきの騒ぎを忘れたようにママが言って、パパにボードを渡した。パパは自分でしっかり見たあと「エディ、見えるか?すごいだろう?」とボードをボクの目の前にかざした。真っ黒なボードの中に、小さな輪がキラッと光ったので、ボクはあわててそれをなめようとしたら「エディ、食べものじゃないんだよ」って引き戻された。TVでは次の金環日食は…って話をしている。人間の興味とか欲望とかは限りがないのかな?
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