2012/6/28
第2話 挨拶まわり(1)
「エディー、今日は会社の人たちに挨拶に行くの」家を出るときママが言った。「たくさんの人に会うので疲れないようにね」車を降りていつもの5階に行ったけどパパはいなかった。会議中だって!パソコンの前で写真を撮ることになってちょっと大きな机に。「役員」というえらい人の机なんだって!「役員」ってどんな仕事をするんだろう?ボクも「役員」になれるかな?
ママとカメラマンの人たちと2階と3階と4階の人たちに会いに行った。どこの階の人もみんな気持ちよく迎えてくれた。特に印象に残ったのは4階だ。たくさんの人がボクの周りに集まってきた。よくみると結構年配の人が多い。
その中で1番前の方にいたオジサンらしい人がボクに近づいて手を差し出した。ボクも応えて握手をした。バシャっとシャッターの音。同時にカメラマンの人の声がした。「エディくん、ちょっとまぶしかったね」ボクは意識してオジサンらしい人の頭の方を見ないようにしていたのに何てことを言うんだ!まぶしくなかったといえばウソになるし・・・。でもオジサンらしい人はとてもいい人だった。パパも髪の毛のことを気にしているようだけどボクは信じている。「髪の毛の寂しい人に悪い人はいないって・・・」
「エディ、ごうかくクンと記念撮影よ」ママが言った。「ごうかくクン?」1階の受付のところにいたド派手な真っ黄色の奴だ。そばで見たら全身顔だらけの怪物だ。ボクは思わず「ワン」って威嚇しようと思ったけど、ママもいたしおねえさんもたくさんいたので我慢した。「エディ、ごうかくクンは試験を受ける子に人気があるんだ。広報の先輩でもあるから仲良くしないとダメだぞ」後でパパに注意された。
もうひとつのビルの1階に行ってみんなと交流したあとお弁当を食べた。ちょっと疲れてママが買ってくれた車の形のベッドに横になっていると「エディー、チッチは?」とママの声。トイレトレーも用意してくれたけど、ボクは人の家ではトイレをしたことがない。お家ではどんなに遊んでいても必ずトイレトレーまで行って用をたすんだけど。「そうだ、エディ会社の周りを散歩しよう」とママが言ってボクを外に連れ出してくれた。助かった。ボクは急いで電柱や植え込みの適当な場所を探した。その時、変な予感がして振り向くと何とカメラマンの人がついてきていた。まさか、この人はボクのトイレの決定的なところを写そうっていうのか?でもそうじゃなかった。散歩している姿を写したかったんだって。
午後、駅の方にあるルネサンス高等学校に行った。290もある学校の中で一番近いんだって。犬を3匹飼っているという女生徒が真っ先にボクを迎えてくれた。みんな若い。さっきまでと大違いだ。
ボクはみんなに囲まれて気をよくしているとヘアピンの女生徒がボクに急接近してきて大声で叫んだ。「エディ、ウチあんたんこと、好いとーばい・・・」ボクはママの腕の中で20センチくらいのけぞった。すごい迫力!これが「肉食女子」なのか?ボクは頭の中が真っ白になった。ボクにはアリアちゃんとかミミちゃんとかガールフレンドがいるけど「好いとう」なんて言われたことがない。後で聞いたら「佐賀弁」で言ってたんだって。方言で話すのが流行ってるんだってー。
気を取り直して前を見ると、男の生徒が「癒やしのエディ、癒やしのエディー・・・・・・・」何回も何十回も言ってくれている。ボクの名前が念仏になるなんて思いもしなかった。突然やさしい手でボクは抱き寄せられた。「誰?」と見るとものすご~くきれいな女の人だ。いつもママから「クレヨンしんちゃんみたいにきれいなおねえさんにデレデレしないでね」と言われていたのをすっかり忘れて、その人にキスしてしまった。責任者の人が「この子はモデルなんです」と言った。「モデル」って何をするのかな?ボクは「役員」じゃなくて「モデル」になってもいいなって正直思った。ちらっと見ると責任者の人が「エディ君、ちょっと接近しすぎだよ」という顔でボクを見ていた。この学校の生徒たちはみんな明るくて個性的でボクは大好きになった。みんなが言ってたんだって。「先生、教室で犬を飼いたい。名前はエディ パート②」
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